きみと泳ぐ、夏色の明日


森谷圭吾は私と同じでノートを買っていた。

現日本高校生記録保持者の人でもノートを買うんだって思ってみたりして。

将来有望の人は勉強しないってイメージが須賀のせいでできてしまってるから、なんか意外に感じてしまった。


「ここの文房具店よく来るの?」

「え、た、たまに」

「品揃えいいよね」

すごい人なのに気さくだし、制服を着てると他の男子高校生と変わらない。まあ、外見やオーラですれ違う人が二度見したりはするけど。


「えっと、名前聞いてもいい?」

同じ緑色のビニール袋を持って店を出るとすぐにそう聞かれた。


「間宮……すずです」

「すずちゃんね。俺は森谷圭吾。有由高の2年生」


知ってますとも。

その名前を昨日から何回聞いたことか。


「すずちゃんは何年生?」

「同じです」

「じゃあ、タメ口で話してよ。俺のことも圭吾でいいからね」


ますます分からない。

水泳雑誌に載るような有名人なのに、こんなにフレンドリーでいいの?ちょっとは警戒したりしないのかな。

私がファンだったら確実に勘違いしちゃうよ。


たまたま帰る方向が同じらしくて、途中までなぜか一緒に歩くことになってしまった。

圭吾でいいと言われたけど、そんなに親しくするわけにいかないから、とりあえず〝圭吾くん〟と呼ぶことにした。      
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