きみと泳ぐ、夏色の明日
「ヘンなところに連れていったら大声出すからね」
「お前、俺のことなんだと思ってんだよ?」
須賀のことを警戒しつつ、私は言われるがまま電車に乗せられてしまった。
休日だから人はそれなりに多かったけど、丁度ふたりぶん座れるスペースが空いていて須賀はそこへ迷わず座った。
「ん」と須賀は隣を指さしている。
「立ってるからいい」
「その意味わかんない意地はなんなんだよ」
「だって……わっ!」
だって、須賀と学校以外の場所で。しかも電車に乗って隣同士に座るなんて違和感だらけだと言おうとしたのに……。
須賀に腕を引かれて私は無理やり座らされてしまった。
肩が当たる。
ドキドキはしてない。
ソワソワはしてるけど。
なんで須賀とこんなことに……って、まだ状況が飲み込めてないから。
そんな気持ちとは裏腹に電車の揺れは心地よくて、そういえば電車って久しぶりに乗ったな。
高校は徒歩通学だし、紗香は部活が忙しくて最近街とかに遊びにいけてないから電車に乗る機会もなかった。
「ねえ、いい加減どこに行くか教えて……」
隣を見ると反応がない。
その横顔を見ながら私は大きなため息をついた。