きみと泳ぐ、夏色の明日



……本当に3秒あれば寝てしまう須賀がすごいというか呆れてなにも言えないよ。

もっと間抜けな顔で寝ていたら笑えるのに。

男のくせにちょっとまつげが長いところとか、プールばっかり入ってるくせに肌は妙にキレイだったり。

須賀のくせにバカっていう欠点しかないのがムカつく。


「ねえ、あの人って水泳の……」

なん駅か通りすぎたあとに同い年くらいの女の子たちが電車に乗ってきて、明らかにその視線は須賀に向いていた。


須賀は中学校から全国大会に行ってるし、男子競泳は人気があるからテレビ中継も入ったりする。

圭吾くんほどじゃないにしても須賀もそれなりに有名らしい。


――『でも恭平、中学の時はずっと彼女いたよ?』

『そんなに驚く?恭平モテるから普通でしょ?』


ふーん。須賀ってモテる人なのか。

その認識はなかったけど、女の子たちが須賀を見て写メを撮ろうか迷ってるから、撮りたいほどの存在なんだって、客観的に感じた。

でも私はとりあえず他人のふりでもしてみる。


たまたま隣に座っただけですよって雰囲気を出して、見慣れない窓からの景色をぼんやり見つめていた。

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