きみと泳ぐ、夏色の明日



私が向かった先は屋上。着いた瞬間に4限目のチャイムが鳴った。


「はあ……」

深いため息をついたあと、日陰になっている場所を探して腰を下ろす。


どうしてこんなにイライラするんだろう?

そう思いながら、さんさんと照りつける太陽を見上げた。


原因なんて考えなくても分かってる。

この暑さ。
この空気。
この季節。

夏の間は毎年心が落ち着かない。


目を瞑ると浮かんでくるあの日の光景。キラキラと光る水中で私に差し伸べられている一本の手。

それを掴んだ感触が今もはっきりと焼き付いている。


それに重なって聞こえてくるのは、他クラスがやっているプールの授業の声だった。


鳴り響くホイッスルにバシャバシャと泳ぐ水の音。


ああ、この感覚イヤだな。後悔で胸が押し潰されそう。

私は耳を両手で塞ぎ、顔を埋めて体育座りをした。


このままずっと小さな場所で、小さくなって、姿形がなくなるまで溶けてしまいたい。

< 6 / 164 >

この作品をシェア

pagetop