きみと泳ぐ、夏色の明日


それから暫く電車に揺られて須賀は降りる駅のアナウンスが車内に流れるとすぐに目を覚ました。

あまり大きな街ではなく、降りる人も私たちを含めて数人しかいない。改札を抜けて須賀はまだ寝たりないのかあくびをしながらスタスタと歩く。


「あのさ、あんまりどこでも無防備に寝ないほうがいいんじゃない?」

私はあえて須賀と肩を並ばずに3歩下がって歩いていた。


「なんで?」

「写メ。たぶん撮られてた」

「まじで。気づいたなら止めろよ」

「いや、べつに私には関係ないし」

そう。全然関係ないけど、もし自分が知らない間に写メとか撮られてたら怖いなって思っただけ。


私は好きな芸能人もいないし、特別にファンの人もいないから、写メを撮ろうとする心理は分からないけど。

ああいう場面を目撃すると須賀って普通の人じゃないんだなって思う。


洋服を着ていても鍛えられた筋肉は分かるし、体格とか骨格とか背丈とか努力だけでは補えない部分に関しては須賀は恵まれた体つきをしている。

水泳をするために生まれてきた、なんて大袈裟かもしれないけど。

でも本当にそう。水泳選手としての素質を嫉妬するぐらい持っている。

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