きみと泳ぐ、夏色の明日
もう海斗が知ってる須賀じゃない。
あの頃から手の届かない存在だったけど、今はもっともっと遠い人。
今の須賀を見て海斗はどう思ってるかな。
嬉しい?すごいって尊敬する?
ううん。きっと気持ちは悔しいだよね。
だから私は今この瞬間もずっと海斗にごめん、ごめんねって謝り続けているんだ。
その帰り道。いつの間にか外は夕暮れになっていた。
相変わらずむし暑いけど汗が出るほどじゃない。
「けっこういい暇潰しになっただろ?」
隣では須賀が清々しい顔をしていた。
どこが。須賀は楽しそうに教えてたけど私はただ見てるだけだったし。
「ああやって初心のバタ足とか教えてるとさ、なんか改めて水泳が好きだなって思えるんだよね」
「………」
「逆に俺が教えられることばっかり」
羨ましいって思った。
だって大人になるにつれて失われていくはずのキラキラとしたあの目を須賀は持っているから。
「間宮はなんでプールの授業出ねえの?」
なんでもズカズカと踏み込んでくる須賀があまりに聞きづらそうに言うから少し可笑しくなった。
「理由なんて、須賀に言っても仕方ないでしょ」
今、目の前に鏡があったら私はどんな顔をしてるのだろうか。
私が水恐怖症になったのも、あの日のことを後悔し続けても、それはもうどうにもならないこと。
だって、どんなに願っても海斗は戻ってこないのだから。