きみと泳ぐ、夏色の明日
須賀恭平。水泳部に所属していて夏の人気者。
種目は100メートル自由形。中学生の時に出場した全国大会であっさり歴代の記録を塗り替えた。
それでも順位は2位だったらしいけど。
この学校にもスポーツ推薦で入り、学力ははっきり言ってバカ。でも将来有望の須賀に先生たちは期待の星だと胸を膨らませている。
「この季節の須賀って特別だよね。急にモテだすし。大会とかあるからかな?」
「……さあね」
相変わらず私はこの話題には乗れない。
だって須賀は須賀じゃん。夏だからってかっこよく見えたことは一度もないし。それに水泳は夏ってイメージが強いけど、冬にだって大会はあるし練習は一年中やっている。
……って、私には関係ないことだけど。
――ガラッ。
昼休み終了1分前に、須賀は教室に戻ってきた。
「あー須賀どこに行ってたの?」
すぐに女子に囲まれていたけど、授業のチャイムがそれを邪魔した。
「ちょっと部活の用があったからさ」
なんて須賀は話を反らしていたけど、私はそれが嘘だって知ってる。
女子たちが鬱陶(うっとう)しくて屋上に逃げたって?
私にはかっこつけの言いわけにしか聞こえない。