きみと泳ぐ、夏色の明日


「すずに似合うと思ったんだよね」

たしかにさっきアクセサリーショップに立ち寄ったけど……。


「すずにプレゼント」

「え?」

紗香は満足そうな顔をしてジュースを飲みはじめた。

こんな可愛いヘアピンは持ってないし、普段は髪の毛なんて寝癖を直すだけ。


「わ、私誕生日じゃないよ?」

もしかして誰かと勘違いしちゃってる?


「はは、知ってるよ。誕生日じゃなくてもすずになにかプレゼントしたい気分だったの」

「でも……」

「それに最近少し元気がなかったでしょ?それを付けてまた休みの日に買い物に行こうよ」

紗香の優しさに泣きそうになってしまった。


紗香は私が毎回プールの授業を見学しても「なんで?」って聞かないし、なにか浮かない顔をしていても深く探ってこない。

私はそれに安心して、打ち明けるという手段を回避している。

だけど、いつか口に出せる日がきたら……ちゃんと全てを紗香には伝えたい。

友達なんていつの間にかできて、いつの間に去っていくものだって思ってたけど。

紗香は失いたくない人のひとりだから。

< 91 / 164 >

この作品をシェア

pagetop