後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 馬車の音に気がついて外に出ると、家の前に立派な馬車が停まったところだった。

「アイラ・ヨーク?」

 問われて、アイラはうなずく。馬車の中から軽々と飛び降りたのは、昨日のイヴェリンと同じように白を基調とした皇宮騎士団の制服に身を包んだ男だった。

 年は十七であるアイラより少し上に見える。短く切りそろえた金髪がまぶしい。アイラに向かって微笑みかけると白い歯が煌めいた。

「……目の保養!」

 そんなことをぼんやり考えている間に、もう一人続いて降りて来た。こちらは最初に出てきた青年とは違って黒い髪をきっちりと束ねている。彼の方はむっすりとした顔でアイラを見る。

「目の保養その二!」

 もう少し愛想よくてもいいんじゃないかとは思うのだが。

「フェラン・レイシー」

 金髪の騎士が名乗った。容姿と同じように、話しかけてくれる声までまぶしい。

「……ライナス・ミラーだ」

 むっすりとしている方の黒髪は、低い声で名乗る。
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