後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 『侍女』たちを追ってきた兵士たちはイヴェリンと側についていた騎士たちが斬り伏せ、もちろんエリーシャ自身も剣を振ることにためらいはなかった。

 そこへ、ジェンセン・ヨークが駆けつけ、この別荘に結界を施してからアイラたちの救出に向かったのだという。

「お父さんに会いたい?」
「……遠慮しときます」

 何があったのか詳細はわからないが、今は父の顔を見て冷静でいられる自信はなかった。

 なぜ、自分を売り渡すような真似をしたのか――それを問いただしたところで、どうにもならないことはわかっているつもりなのだけれど。

 どうせ自分は売られた身――父の作った借金を返すか、後宮側の人間がもう不要と判断するまでは、エリーシャの側にいるしかないのだから。

「それより、つきそってくださってありがとうございます。エリーシャ様がついてくださるなんて」

 皇女に看病されるとは滅多にできない経験だろう。

「いいの。でも、言ったでしょ? イリアとファナと交替で付き添いしたの。まさか騎士団の連中につき合わせるわけにもいかないものね。それより、いざって時は、元の姿に戻りなさいって言ったのに」
「そんな余裕はなかったです……」
< 135 / 394 >

この作品をシェア

pagetop