後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 ――よくないだろ! よくない。絶対によくない! そう思うけれど、アイラにはまた違う疑問が芽生える。

「――でも、保護って? ――エリーシャ様があれじゃ、意味ないんじゃ」

 何しろエリーシャは好き勝手に後宮を出入りしているわけで。アイラもエリーシャと行動をともにしているのだから、保護になっていないのではないかと思う。

 アイラの表情に気づいたように、父は軽く笑った。

「皇女殿下を放置しておく訳ないだろう。宮廷魔術師がこっそり護衛しているから安心だ――まあ、本当の本当にいざって時しか宮廷魔術師の出番はないけどな」

 言われてみれば、それも当然だ。

「おまえには言ってなかったけど、パパ、今皇帝陛下直属で動いてるんだよ」
「へ?」
「というわけで、任務に戻るから、おまえはしっかりエリーシャ様をお守りするんだぞ」

 最後にとんでもない爆弾を落として、ジェンセンはアイラが呼び止めるのにもかまわず部屋を出ていってしまった。
 
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