後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「もともとおばあ様はセルヴィスに皇位を継がせたがっていたしね――まさか、本気で殺しにかかってくるとは思わなかったけど」

 エリーシャはため息をついた。

「……でも、どうしてそんなことが言えるんです?」

 イリアがおそるおそる返す。皇后が皇帝の孫を殺そうとするなんて聞いたことがない。

「わたしの性格をもっともよく知ってる一人は、おばあ様でしょう――だから、レヴァレンド家との見合い話をねじ込んだ。そうすれば、終わったとたんわたしが憂さ晴らしに出るのは簡単に読めるでしょうからね。いくらなんでもあいつはないわぁ、あれとだけは帝国を背負えないもの」
「行き先も、ですか?」
「それはまあ……」

 エリーシャは苦笑いした。

「おばあ様に、温泉に入りたいから別荘使うって言っちゃったし。まさかおばあ様が暗殺者を送り込んでくるとは思わないでしょ――考えてみれば、公務の予定を組み替えるの、ずいぶんスムーズにいったのよねぇ」

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