後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 本来なら、よほどのことがない限り、皇女が皇宮を離れるのにはそれなりの手続きが必要だ。エリーシャのごり押しもあったのだろうけれど、裏で皇后が手を回していたとなれば納得できる。

「でも――セルヴィス様に継がせたいから、というだけの理由でエリーシャ様を暗殺しますか? ただでさえ、お血筋の方が少なくなっていますのに」
「ん」

 エリーシャは、下唇を突き出した。

「たぶん、それだけじゃないとは思うのよ。ただ、考える材料が少なすぎてまだ結論を出すことはできないの」

 それから、エリーシャはイリアとファナを見た。

「あなたたち、実家に戻りなさい。後宮に戻ればわけのわからない政治抗争に巻き込まれることになる――アイラだけは戻ってもらわないと困るけど。護衛も影武者もまだ必要ですからね」
「それはできません」

 イリアが言った。

「アイラ一人でエリーシャ様のお世話全てに手が回るとは思えません。わたしは戻ります」
「イリア一人行かせるわけにはいきませんよ。それに」

 ファナは肩をすくめた。
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