後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「政治抗争は人間がするものでしょ? あんな化け物がいる外にいるのはまっぴらです」

 どうやら、エリーシャたちのところにもあの兵士があらわれたらしい。とっくに死亡し、肉体が腐っているのにも関わらず動き回る兵士が。

「後宮にいれば、すくなくとも宮廷魔術師の方が守ってくださるでしょう。わたしはその方が安心です」
「やれやれ」

 エリーシャは首を振った。

「――そうしたいのならとめないけど。それなら、今まで以上に注意を払ってちょうだい――特に食べ物関係。毒を盛られるかもしれない」

 イリアとファナは緊張の面もちでうなずく。

「――それと、アイラ」

 アイラは首を傾げた。

「ジェンセンの魔術書、専門家を入れた方が早そう。どうせ怪我が治るまでは稽古できないんだし、しばらくそっちにあたってくれる?」
「――それはかまいませんが」

 以前、騎士団の二人が、女性の魔術師を手配すると言っていたことを思い出した。

「わたしは魔術に関しては才能ゼロで――」
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