後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「――何」
「ジェンセンが最後に見てた本は、これ?」

 アイラはベリンダの差し出した本を手に取った。

「死者操術――これも、最後に読んでたと思う。他にもあと何冊か」
「わかった。それと、もう一つ聞いていい?」

 アイラは首を傾げた。

「ジェンセンは、あんたに何か魔術に関する教育を与えたり、魔術をかけたりとかしてた?」

 困惑に、アイラの眉間にぎゅっと皺が寄る。

「魔術の教育は全然――才能ないらしくて。魔術の実験台にはよくされたけど、そういう話ではなくて?」
「ん、ちょっと考えてたのとは違うかな」

 アイラの表情が険しくなるのを見て、ベリンダは手を横に振った。

「たいした話じゃないんだ。あのジェンセンだから、あんたに何で保護の魔術をかけなかったのかなって思っただけ。起こして悪かった――また、何かあったら聞くと思うけど」

 アイラがまた目を閉じたのを確認して、ベリンダはぽんぽんと布団の上から叩く。
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