後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 それから侍女のお仕着せに身を包んだ彼女は、アイラを残してエリーシャの寝室を出ると、そのまますたすたと廊下を進んでいった。

 周囲を気にすることなく、後宮からも出て、魔晶石で壁が作られた区域へと進んでいく。

「カーラ、いるんでしょ?」
「あれ、ベリンダ、どうしてここに?」

 以前アイラが訪れた時同様、髪を後頭部の高い位置で一つに結った眼鏡の青年はベリンダを見て驚いた表情になる。

「んー、あぁ。今日から皇女付きで入ってるんだ」
「そのお仕着せは侍女だよねぇ?」
「皇女宮内に大量に魔術書が運び込まれててさ、そっちの解読に呼び出されたってわけ」

 カーラは研究していたらしい何かを置くと、ベリンダに近くの椅子を勧めた。

「あぁなるほど――そういや、ジェンセン・ヨークの姉弟子だったもんね――僕も同じ師匠だけど、僕が入った時は、彼はもう独立してたからなぁ」

 記憶を掘り起こしていたらしい彼は、ぽんと手を叩いて納得の表情になる。

「才能じゃ、あっちの方がはるかに上だったけどね――で、娘のアイラには会ったことがあるんでしょ」
「あるよー、けっこう可愛いよね」
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