後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「それって難しいの?」

 ベリンダは大きく首を降った。

「難しいどころの話じゃない――二段階で術を成功させなきゃならないからね。まずは死者の肉体に魂を植え付けること。次にその死者を自在に操ること――それでも生きている人間を複数同時に操るよりは簡単かもしれない」

「ジェンセンなら、それに成功すると思う?」

「わたしの知ってる限りでは、ジェンセン・ヨークか――ユージェニー・コルスくらいかな」

 エリーシャの問いに、ベリンダは二人の名を上げた。それから天井を見上げてしばらく考えた後、もう一人の名前をつけ足す。

「後はユーディーン、という名前だけ知られている魔術師。もっとも彼は行方不明になってから十年以上たっているからもう死んでいるかもしれないけどね」

 ベッドから上半身を起こしたアイラは、おそるおそるたずねた。

「ユージェニー・コルスって、三十代……うぅん、二十代後半くらいの割と美人な?」

 アイラの脳裏には父と対峙していた女魔術師の姿が蘇っていた。背が高くて、女性としての魅力に溢れていたと思う。

「ああ、アイラ――というか皇女を殺そうとした魔術師でしょ、間違いない」
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