後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 それから、ベリンダはとんでもないことを口にした。

「もっともあいつは中身八十以上のばーさんだけどね」

 アイラとエリーシャは顔を見合わせて目をぱちぱちとさせた。

「え、だって、どう見ても二十代……でなければ三十代で」

 無愛想な声音は変わらずにベリンダは言った。

「あの女、わたしの師匠の愛人だったんだよ。当時から姿が変わらない化け物でね。八十というのも最低限見積もっての話。ひょっとすると百過ぎているかもしれない」

「うそぉ……」

 アイラの口から気の抜けた声が漏れた。いくら何でもそんな年には見えなかった。

「さて、それはさておき、だよ。あんたの父親を呼び戻す手段を考えないとね」

 ベリンダは腕組みをする。エリーシャはぺらぺらと書物を捲っていた手を止めた。

「パリィに連絡してみたんだけどね。セシリー教団の方には動きはないみたい――だけどまあずいぶんとぼったくりな話なのよね」
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