後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「ぼったくり、ですか」

 ふん、とベリンダが鼻を鳴らす。

「おおかた死者の声を聞かせてやるとかなんとか言って、引き替えに大金を要求しているんだろうよ。あいつらのやることなんて大概そんなもんだ」
「あらよくわかってるじゃない」

 くすくすとエリーシャは笑う。それから、パリィ自ら教団内部に潜入したらしいという情報を教えてくれた。

「彼に調べさせた方がいいものとかあるの?」

 腕組みしたままベリンダは考え込んだ。

「アイラの話からすると、ユージェニーの死者操術はまだ完璧じゃないと思う。『ぐずぐずになる』ってジェンセンは言ってたんだろ?」

 こくり、とアイラはうなずいた。あの森での出来事は思い出したくもなかったがしかたない。

「ということは、だ。おそらく死者操術の一段階目。呼び出した魂と肉体の結合がうまくいっていない。だから、死体が腐ってくんだろうと思うね」
「……すごく……臭かった……」
「教団とユージェニーの間につながりはないかな。死者の声を聞くってだけなら難しくはないが――本がこの状態だからね。使い手はそれほど多くない。そもそも禁忌だし」

 ベリンダは、エリーシャの持っている「おいしいお魚料理のレシピ集」に見せかけた魔術書の方へ顎をしゃくった。
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