後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 ゴンゾルフは足を組み――妙に洗練された仕草でカップを口に運ぶ。

「平凡な、ただの、町娘が後宮に放り込まれてこんなに馴染むはずないでしょうが。あなた、自分が思っているよりはるかに図太いわよ」
「――それは、あの父と暮らしているからだと思います」

 放蕩親父と一緒に暮らしていれば、嫌でも図太くなろうというものだ。

「はいはい、そこまで。いいわね? あなたに嫌という権利はないってわかってるでしょ? これはね、命令よ、命令」

 ゴンゾルフがアイラの目の前でひらひらさせてみせたのは――父の借用書。そう言えば、借金は現実のものだった。

 黙り込んだアイラは首を左右に振る。それから、ゴンゾルフに何をすればいいのかとたずねた。

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