後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「自分の面倒なことは、常に他人に押しつける。結界の破壊だってそうだ。あいつなら、外からだって破壊できるだけの能力を持ち合わせているのに面倒くさがってわたしに押しつけた」

 家の父がすみません、とアイラは頭を下げた。

 エリーシャ自ら乗り込むことにしたため、今日のアイラは素顔ではなくブスメイクだ。それにベリンダとお揃いの侍女のお仕着せを身につけて、スカートの下には短刀を二本忍ばせている。

「さーて、敵地に入るとしますかね」

 妙に好戦的な表情で、エリーシャがぽきりと指を鳴らす。むしろ、屋敷に入る前からヤる気満々ではないか。

 馬車は、屋敷の門をくぐった。

「気持ち悪い――何、この気配。よくこんな中で生活できるわね。この屋敷の住人は」
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