後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 エリーシャが不味いものでも食べた時のような表情になった。ベリンダも表情を険しくしている。

「アイラ、あなた何ともないの?」
「何とも。今日はいい天気だなーって」

 アイラには、目の前の二人が何を不愉快に思っているのかが理解できない。

「――ここまで術の影響に気づかないでいられるというのもある意味才能だな」

 ベリンダが嘆息する。

「確かにそうね」
 誉められているのかけなされているのかわからない。

「大丈夫、けなしているわけじゃないから」

 アイラの表情を読みとったようにエリーシャは言う。

「結界の破壊はいつ行いますか、エリーシャ様?」
「わたしが合図したらすぐに」

 かしこまりました、とベリンダが姿勢を正すのと同時に馬車は静かに停止した。
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