後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「それをここで言えと? なかなか難しい要求ですな、エリーシャ様」

 ハンカチを取り出し、地面に顔からつっこんだ時の汚れをぬぐい去りながらダーシーは言った。それから嫌みなほどに丁寧な仕草で、蹴られた勢いで乱れた髪を撫でつける。

「では、お茶の席へと参りましょうか」

 ダーシーの差し出した手を平然としてエリーシャはとる。わけがわからずおろおろしているアイラの腕をとって連行しながら、ベリンダが説明してくれた。

「あれが本来の彼――最初に王宮に来た時もそうだったけど、今まで操られてたってわけ。彼の頭を押さえつけないといけなかったから、エリーシャ様が穏便にすませたんだよ」

 あれが穏便なのか、アイラは戸惑ってしまう。敵の本拠地でけっこうな騒ぎを起こした気がしなくもないのだけれど。

 とはいえ、アイラにはそのあたりを追求することもできないわけで、どうなるんだろうと思いながら、ついて行くしかないのだった。
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