後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 ダーシーの答えは、真摯なものだったのでエリーシャもそれ以上追求するのはやめたようだった。ダーシーがにこりとする。

「友好を深めませんか、皇女殿下?」
「友好を深めるとはどういうことかしら?」
「……このまま、このお話を進めましょう」

 にこにことしながら、ダーシーは言った。セシリーの支配下から抜けた後の彼は、意外に人好きのする笑顔の持ち主だった。その人好きのする笑顔が逆に胡散臭いとアイラなどは思ってしまうのだが。

 それをしらっとした顔で見て、エリーシャはため息をつく。

「いいわ、進めましょう。その方がめんどくさくなくていいわ。誰かと婚約しておけば、おばあさまもこれ以上はうるさく言わないでしょうからね」

 でも、と彼に向かって指をつきつけ、エリーシャは宣言した。

「婚約したからって、絶対に結婚するとは限らないんですからね!」
「それ以前に片づけなければならないことがありますしね」

 ダーシーもそれに同意した。
 
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