後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 ダーシーとの婚約話を進めようとしていたのは、なんとかしてレヴァレンド侯爵に近づこうという手段でしかなかったのだけれど。

「屋敷の使用人たちも多かれ少なかれセシリーの影響下にあったようですな。全員治療が必要でしょう。生き残っている連中に関してはということになりますが」

 珍しく険しい表情になったジェンセンは、アイラの方を振り返った。

「アイラ、頼むから口を閉じてくれないか。せっかくの美人がだいなしだぞ」
「今は不細工メイクなんだけどね」

 父に辛辣な口調で返したアイラだったが、慌てて口を閉じた。なんだか驚かされてばかりで、口が開いていたのに気づかなかったのは失態だ。

「それよりも」

 ジェンセンは皇女に視線を戻して、最初の話に戻った。

「生き残りの治療を始めましょう。ひとまず、洗脳を解いて――皇宮にしますか、エリーシャ様??」
「……そうね。皇宮の中の建物を一つ借りられるように手配しましょう。おばあ様がなんとおっしゃるかはわからないけれど。いえ、魔術研究所にするわ。その方が安心」

 皇后オクタヴィアは、表立っていないとはいえダーレーン寄りだ。何か手を打ってくるかもしれない可能性もある。
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