後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「魔術研究所ですかぁ。あそこは敷居が高いんだよなぁ」
ジェンセンがぼやく。
「何言ってるのよ、皇女宮にだって堂々と入ってくるくせに」
アイラはあきれた顔をして、父親を見やった。
「では、エリーシャ様、魔術研究所の方の手配はおまかせしてよろしいですか? それから、死体も魔術研究所に運び入れようと思いますがかまわないでしょうか」
「ええ、それでお願い」
真面目な顔になった父親に、アイラは少し驚いた。父親がこんな風に真面目になった姿を見るのは久しぶりのことだったから。
自宅にもうけた研究室にいる父は、たいてい扉に背中を向けていたから、アイラが食事を運んでも見えるのは背中だけだった。たまに振り返っても、「おう」とか「ああ」とか短い言葉を発するだけ。
けれどそんな彼を、尊敬していたことをアイラは思い出した。だからこそ、父の研究していた本を処分することはできなかった。
イヴェリンに処分するな、と言われたということもあったとしても。
「ダーシー、あなたはこれからどうするの?」
エリーシャがたずねた。ダーシーは考え込む。
ジェンセンがぼやく。
「何言ってるのよ、皇女宮にだって堂々と入ってくるくせに」
アイラはあきれた顔をして、父親を見やった。
「では、エリーシャ様、魔術研究所の方の手配はおまかせしてよろしいですか? それから、死体も魔術研究所に運び入れようと思いますがかまわないでしょうか」
「ええ、それでお願い」
真面目な顔になった父親に、アイラは少し驚いた。父親がこんな風に真面目になった姿を見るのは久しぶりのことだったから。
自宅にもうけた研究室にいる父は、たいてい扉に背中を向けていたから、アイラが食事を運んでも見えるのは背中だけだった。たまに振り返っても、「おう」とか「ああ」とか短い言葉を発するだけ。
けれどそんな彼を、尊敬していたことをアイラは思い出した。だからこそ、父の研究していた本を処分することはできなかった。
イヴェリンに処分するな、と言われたということもあったとしても。
「ダーシー、あなたはこれからどうするの?」
エリーシャがたずねた。ダーシーは考え込む。