後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「さすがにこの屋敷にとどまるのは恐ろしい気がいたしますね。とはいえ、別邸の中で一番近いのはセシリーに使わせていたものですし……かまわなければ、城下に宿でもとろうかと思いますが」

「いえ」

 エリーシャはすぐに彼の言葉を否定した。

「どこか適当な屋敷を持っているのなら、と思ったけれど――そうでないのなら、皇宮にいらっしゃい。少なくとも、皇宮にいる間は、おばあ様も手を出せないだろうし――警護という点では一番安心だわ」
「皇女宮に入れていただけるのですか?」
「馬鹿なことを言わないで」

 エリーシャは、ダーシーの言葉をぴしゃりとはねつけた。

「皇宮には、宿泊施設だってあるのよ」

 皇宮には、晩餐会が開催された時などに貴族たちを泊めるための宿泊施設がもうけられている。地方から皇宮にやってくる貴族も多数いるからだ。

「身分の高い貴族にしか使わせない一画があるから、そこをあなたの宿泊場所にしましょう」

 離れのようになって、独立している建物がある。エリーシャはそこをダーシーのために準備させることにした。
< 211 / 394 >

この作品をシェア

pagetop