後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「何かわかったら、ここに書いて。それから資料が必要なら、アイラに言ってちょうだい。ジェンセンの資料の中に必要なものがなかったらそれも言って。全力でそろえるから」
「はーい、了解っ!」
「よろしく頼むわね。アイラ、さて、行きましょうか」

 エリーシャはアイラの方を振り返った。

「皇女宮にお帰りですか?」
「いいえ違うわ。婚約者殿に会いに行くのよ! 熱烈に愛し合ってるんですからね、わたしたちは」
「お言葉ですけど」

 アイラはふぅっと息を吐き出した。

「ものすごーく、嘘っぽいですよ! エリーシャ様!」
「あら、ばれた?」

 けたけたと笑いながら、エリーシャは皇女宮を出て、中庭に足を踏み入れる。その先に控えているのは、離れとなっている建物が並んでいる一画だった。

 皇宮内に宿泊を許されるのはごく一部であり、さらには公式行事の場として使用される前宮ではなく、後宮まで入ることを許されるのは、ごく一部の者だけである。
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