後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「あの、どうかなさいました?」
「いえ、たいしたことではないの――ただ、ついうっかり蹴り上げたくなったのは何でかしらね?」
「それは……」

 あの時思いきりダーシーを蹴り上げたのが、そんなに癖になったのだろうか。

「あなたにならいくら蹴られてもかまいませんが」
「やめてよね。そんな癖には目覚めたくないわ」

 この会話を交わしている間、ダーシーもエリーシャもいたって真面目な顔である。おろおろしているアイラには二人ともかまいもしなかった。

「それはともかく、よ」

 エリーシャは真面目な顔を作って、ダーシーを手招きする。

「あなたはそこにお座りなさい」

 皇女宮でそうしているように、床の上に直接クッションを置いてそれぞれ楽な格好になる。アイラは睡蓮邸付きの侍女たちと一緒になって、お茶の用意をしていた。
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