後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「ジェンセンが使えれば一番楽なんだけどなー。ジェンセンはおじい様付きだし、勝手には使えないわよね。皇宮内で使う分にはかまわないっておじい様はおっしゃっていたけど」

「ジェンセン・ヨークなら一番安心でしょう。彼の能力にはわたしも感心させられております」
「くそ親父ですけどね」

「エリーシャ様の前で、その言葉遣いはどうかと思うよ」

 アイラのつっこみを、ダーシーがたしなめた。無言でアイラは一礼したが、ヘンタイに言われたくない、とはさすがに返せなかった。あまりよくない言葉であることは自覚しているし。

「教団に潜入したパリィからも連絡ないしね。あれからどうしたのかしら」

 侯爵がいなくなったために情報を追うのが難しくなってしまった。証拠隠滅を謀るのなら、セシリーに力を貸していたダーシーの父は真っ先に殺すべき対象だ。自分でもそうすると、エリーシャはため息をついた。

「ああもう、手が足りないったら!」

 ジェンセンは魔術研究所で生存者の手当を行うべきだ。それは手がかりのない今、重要な手がかりを得るための最短の道でもある。生存者たちの証言を得ることができたなら。

 しばし考え込んでいたエリーシャは、ぽんと手を叩いた。
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