後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「ジェンセンの手の者を借りればいいんだわ! ジェンセンだって一人で動いていたわけじゃないだろうし――彼の部下を借りればいい」

「信用できますか、彼の手の者が?」

「彼はおじい様の直属だもの。ある意味、大貴族よりよほどおじい様に近くて、信頼されている人間だと思わない?」
「それは、そうかもしれませんが」

 ダーシーは渋い顔だ。あれを信頼してはいけないのではないかと、アイラは心の中でつぶやいた。

 正直なところ、父が何を考えているのかわからない。アイラが思っていたよりずっと重要人物で、頼れる存在で、たまには真面目になることもあるらしいということを最近ようやく知ったところではあるけれど。

「アイラ。ジェンセンに夕食後、図書室に来るように言ってちょうだい。魔術研究所よりあそこの方が盗み聞きの心配はないだろうから」
「かしこまりました」

 アイラからエリーシャの伝言をきいたジェンセンは、先に行って結界を確認して皇女を待つと返事したのだった。
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