後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「それはともかくとして、です。現状でダーレーンに入れられる部下というのは存在しないのですよ、エリーシャ様」
「どこもかしこも人手不足ね!」
「こういう事態ですからねぇ」

 皇女と魔術師は顔を見合わせた。アイラはその二人の様子に、おろおろとすることしかできない。

「どうしましょうねぇ――ああ、イヴェリン・ゴンゾルフを借りましょうか。それとうちの娘を」

「保護を求めて、アイラを後宮につっこんだんじゃなかったっけ?」

「こうなりゃ話は別ですよ。娘には借金返すまできりきり働いてもらわなけりゃですしねぇ」
「その借金はあんたの作った物じゃないの」

 あきれた口調でエリーシャは言う。そうしてから、アイラを手招きした。

 思わぬところで自分の名前を出されて、目をぱちぱちさせていたアイラは恐る恐るエリーシャの側へと近づく。

 とりあえず、父親を殴り倒してやりたかったのだが、話の途中だったので後に回すことにした。

「それはそれ、これはこれですよ、皇女殿下。一応これでも父親ですのでね。娘はなるべく危険から遠ざけておきたいと思っておりましたよ。しかし、まあこうなっては――」
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