後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「まあ、城の酒蔵は控えていただきますが、わたしが外から持ち込んだのを飲んでいただく分にはかまいませんが」
「じゃあそれで」

 結局飲むのかよとつっこむわけにもいかず、アイラは小さなため息をつくのにとどめておいた。

「で、どうしてアイラを外に出すのかしら? わたしに身近で絶対に裏切らない人間といえば、フェランでもライナスでもよかったでしょ。それこそゴンゾルフでも」

「あのでかいおっさんは目立ちますからなあ」

 自分より若い相手をおっさん呼ばわりしておいて、ジェンセンは右手を上げた。その人差し指が、まっすぐにアイラを指す。

「アイラがわたしの娘であるということが必要条件なのですよ」
「血縁関係が必要ってこと?」

 わけもわからず、アイラが彼女自身をまっすぐに指している指先を見ているのに対して、エリーシャの方はすぐに事情を飲み込んだようだった。

「あのさぁ、父さん。どういうことなの?」

 ようやくそれだけを絞り出すと、父はアイラの方に向けていた指をようやく下におろした。

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