後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「お前に魔術の素養はない。まったくと言っていいほどにな」
「でしょう? 父さんそれを残念がってたんでしょ」
「いや、ぜんぜん」

 父が本気なのか否なのか、アイラにはわからない。

「でもまあ、お前じゃないと頼めないことがあってなぁ。お前の身体を使えば、後宮からでもお前のいるところであればどこでも魔術を使えるというわけさ。これをやるためには、パパの血縁者じゃないとだめなんだよ」

「わたしを遠隔操作しようってわけ?」

「こればかりは、他人には頼めないからなぁ。あいにくお前は一人っ子だし、パパ隠し子なんていないし」

 隠し子なんていたら、それはそれで問題だ。

「じゃあ、わたしを後宮になんて入れないで遠くからこっそり守ってくれればよかったじゃないの」

「そういうわけにもいかないさ。それやってる間、パパ無防備になっちゃうし、ずっとお前に注意払っとくわけにもいかないだろ」
「で、アイラは引き受けてくれるの? くれないの?」

 エリーシャの言葉に、アイラは黙り込んだ。断ったら、エリーシャは他の手を考えなければならない。

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