後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 これでは、出会いをもとめる機会もなさそうだ。
 
 まあ、後宮に出入りできる男は騎士団所属の者と皇帝の側近だけだし、出会ったところで何か期待できるわけでもないが。

 鞄を持ったアイラを引き連れ、イヴェリンは部屋を出た。

「まずはエリーシャ様の侍女に引き合わせよう。二名ついているが、今後は君が一番近くにつくことになる」
「先輩侍女を押しのけてですか?」
「君は護衛を兼ねているが彼女たちは違うのでね――彼女たちもわかっているから大丈夫だ」

 本当に大丈夫なんだろうか。

 長い脚を動かして、さっさと廊下を進んでいくイヴェリンのあとから、ちょこまかとアイラはついていった。

 どこまでも続いているのではないかと思われるほど長い廊下を延々と歩いていくと、廊下の前方が壁で塞がれていた。

「ここが後宮の入り口になる」

 アイラの手が緊張で握りしめられる。扉の両側は、やはり騎士団の制服を身につけた男たちにかためられていた。
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