後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 こりないフェランが、口を挟んだ。

「……お前も馬鹿だな。こんなふざけた顔をした手代がどこにいる!」

 フェランの両頬を思いきりひねり上げながらイヴェリンが言う。まぁまぁ、とアイラは二人の会いだに割って入った。

「フェラン様もライナス様も手代には見えないですよ。あと、イヴェリン様とわたしの想定している店はそんなに大きくないです」
「じゃあ、護衛とか」
「乗り合い馬車の料金けちって歩いてるのに、護衛を雇う人はいませんよ。とにかく、ついてこないでください」

 フェランとアイラがやりあっている間に、イヴェリンとライナスの二人はおとなしく話をしていた。

「とにかく、お一人でアイラを護衛するのは危険です。俺たちも連れて行ってください」
「わたしが一人では任務を果たせないと? それに、アイラも自分の身くらい自分で守れるぞ」

 イヴェリンは首を振った。夫に信頼されていないと思えば、彼女のプライドが傷ついた。女性で初めて副騎士団長の地位にまで上り詰めたというのに。
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