後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「そんなことないですよー。やっぱり、離れたら心配なんじゃないですか? 頼りないとかじゃなくて、あう、お二人はいつも一緒だし」

 ゴンゾルフとて悪気はないのだろう、たぶんとアイラは思う。なにしろ皇女近衛騎士団の団長と副団長は夫婦なのだから当然一緒に住んでいる。職場も一緒だし、離れている時間の方が少ないくらいだ。

 それが妻の方だけ、アイラの護衛として出て行くということになったら心配になるというのは当然だ。剣の腕がどれだけ優れていようとも、とアイラなどは思うのだけれど。

「帰ったら教育が必要だな」

 イヴェリンの方は厳しい表情をしている。

「教育って……」
「おかしいだろう、任務を果たしに行くのに護衛のつく騎士がどこにいる」

 イヴェリンは顔をしかめたまま足を進めた。

「まさか、夫の躾直しをしなければならないとはな」

 ぶつぶつと言いながら、イヴェリンは顎に手を当てて考え込んだ。

「それは帰ってからにしませんか」

 イヴェリンの怒りを抑えるのは大変そうだ。アイラは頬をひきつらせながら、皇宮に戻った後の様子を思い浮かべて身を震わせた。
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