後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「レヴァレンド侯爵などは、酒をたしなんでいたと思うのだが」
「侯爵は、まだ信徒じゃなかったのかもしれませんねぇ」

 アイラも同じように、鶏の煮込みにパンを浸す。タラゴナ帝国とは違っていくらか辛みのきいたそれは、アイラの食欲をそそる。

「それより、今後のことを考えなければな。教団にどうやって入り込んだものか」

 旺盛な食欲で食事を片づけながら、イヴェリンは考え込んだ。

「その辺で信者募集してませんかねぇ?」
「そんな簡単なものではないだろう」

 イヴェリンとアイラがひそひそと話をしながら食事をしていると、急にがやがやとあたりが騒がしくなった。

「おーい、酒くれ! 酒」

 食堂に下りてきたフェランの陽気な声がする。イヴェリンは額に手を当てた。

「……あいつは任務のことを忘れているんじゃないのか?」

 ビールのジョッキがフェランの前に運ばれた。仏頂面のライナスの前には、ジョッキに並々と継がれた水が運ばれる。

「ライナス、お前も飲めよ」
< 251 / 394 >

この作品をシェア

pagetop