後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「女性の足で歩いていくのは大変でしょう。二つ隣の村まででよければ乗っていきませんか」

 アイラとイヴェリンは顔を見合わせた。主の首には黄色い布が巻かれている。ということは、セシリー教団の信徒ということだ。

 偶然のこととはいえ、教団の信徒に接近する機会を得たならば逃す手はない。役人たちに根ほり葉ほり聞かれる危険性と、教団の信徒と近づきになれる利点を考慮した結果、答えはすぐに出た。

「乗せていっていただけますか?」
「では、お役人との話が終わるまでしばらく待っていてくだされ」

 主に言われて、イヴェリンはアイラに道の傍らにある石に腰掛けて待とうと合図した。

 しばらくしてやってきた役人たちは、三人の強盗をやっつけたアイラとイヴェリンの腕前に感心したようだった。ろくな武器も持っていなかったのだ。

「あー……あれですかー」

 問われてアイラは遠い目になった。

「うちの姉、見かけはああなんですが、ぶちきれると怖いんですよー。もう、コントロールするのが大変で大変で大変で大変でほんっとーに大変でー!」

 ぶちきれると怖いのは、強盗たちは身を持って知ったことだろう。
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