後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 いや、実際には切れていたわけではなくて、イヴェリンはとても冷静だったのだが、そう説明しておいた方が話が早いと思ったのだ。

「いや、大変なのはわかりますよ……」

 アイラの話を聞いた役人も遠い目になった。倒された強盗たちの様子を見れば、イヴェリンを敵に回したくないというのは当然の判断だ。

「でもまあ、タラゴナの貴族の方々が残りの三人を捕まえてくれたのも幸運でしたね。何でも、お忍びで物見遊山の旅の途中だとか」
「ぜんぜん忍べてませんけどねー」

 あはは、とアイラが笑うと、そうですねー、と役人も笑ったのだった。

 † † † 

「本当に助かります。妹と二人でどうしたらいいのかと途方にくれていたので」

 荷台に座ったイヴェリンは、主――ケヴィンと名乗った――に丁寧に礼の言葉を述べた。フェランとライナスは、役人たちが送ることになって別行動だ。まあ、落ち合う先は決めてあるから大丈夫だろう。

「いやー、こんな美人さんお二人なら大歓迎。でも、あまり似てない……かな?」
「この子は父と後妻の間に生まれたんです。わたしとは腹違いということになりますね」
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