後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「そうなんだ、しかしまあ、あんたたちのお母さんは二人とも美人だったんだろうなぁ」

 二人は赤の他人だから似ている方がレアケースなのだ。そんなことは当然知るはずのないケヴィンは、のんきな言葉をはきながら、奇跡的に怪我一つ負っていなかった馬に荷馬車を引かせている。

「そう言えば、皆さん、首に黄色の布を巻いているのですね。こちらの国の流行なのですか?」
「ああ、これか?」

 ケヴィンは、何でもないことのように首に巻いた布に手をやる。

「秘密でもなんでもないしなぁー。セシリー様にお会いした者は全員もらえるんだ」
「馬鹿高い値段で売りつけられるとかじゃないんですか?」

 アイラが身を乗り出した。馬を御しながら、肩越しにケヴィンはアイラの方を振り返り、怪訝な表情を浮かべる。

「ああ、だって、ほら! 生臭坊主とか、役に立たない紙切れを大枚はたいて買わせたりするじゃないですか!」

 タラゴナ帝国内の一部でそういった団体が問題になったのはつい最近のことだ。セシリー教団のような新興宗教団ではなく、皇帝が訪れる神殿まで似たようなことをやっていたのだから始末に負えない。
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