後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 ライナスと二人かー、などとアイラが腕をとられている間ぼうっと考えていると、イヴェリンに背中を押される。

「では、頼む」

 イヴェリンのその声に、ライナスはアイラの腕を放し、ついてくるように合図した。

「……まずは裏口だ」

 二人が侵入しようとしているのは、この村の中でも一番目か二番目に立派な家だ。むろん貴族の屋敷ほどではないものの、それなりに高い塀が家の周囲を囲んでいる。

「裏口に行ってどうするんです」
「まあ、たいてい裏口ってのは警戒心が緩んでるからな。主はまず使わない――そうだろ?」
「……エリーシャ様はがんがん使ってますけど?」

 エリーシャが抜け出す時使うのは、皇女宮の抜け道だ。その抜け道は、裏口と化していて、エリーシャは隙を見計らっては、そこから夜の街に繰り出していた。

「あれは、裏口じゃなくて抜け道だ!」

 ライナスが低い声でアイラの言葉を訂正する。抜け道をがんがん使うのはいかがなものか思ったけれど、アイラも毎日のように使っていたのだからそれ以上何
も言えない。
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