後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
若々しい女の声がする。どこかで聞いたような――と思いながらアイラが振り返ると、以前対峙したことのある魔術師がいた。
ユージェニーは、ローブの上からでもわかるほど見事な盛り上がりを見せびらかすかのように腕を組んでいる。
その胸にある肉の塊を少しばかり分けてもらえないだろうか、とアイラが不謹慎なことを考えている間にも、ライナスはアイラを背後にかばう体勢になって、剣を抜いていた。
「ぼやっとするな! やるべきことをやれ!」
低いその声にアイラは胸に手をやる。その仕草にユージェニーは気がついたようだった。
「ジェンセンを呼ぶのはやめてちょうだいよ。あなたたちに危害を加えるつもりはないんだから」
そう言って、ぱちりと片目を閉じる。ジェンセンならでれでれと鼻の下が伸びるところなのだろうが、ライナスは動じた様子もなかった。
「あら、つまらない」
「危害を加えるつもりはない、とはどういうことだ?」
「言葉の通り。別にあなたたちを殺せって言われてるわけじゃないしね。わたしも、自分の獲物を追ってここに来たんだけど――あと一歩のところで逃げられたみたい」
ユージェニーは、ローブの上からでもわかるほど見事な盛り上がりを見せびらかすかのように腕を組んでいる。
その胸にある肉の塊を少しばかり分けてもらえないだろうか、とアイラが不謹慎なことを考えている間にも、ライナスはアイラを背後にかばう体勢になって、剣を抜いていた。
「ぼやっとするな! やるべきことをやれ!」
低いその声にアイラは胸に手をやる。その仕草にユージェニーは気がついたようだった。
「ジェンセンを呼ぶのはやめてちょうだいよ。あなたたちに危害を加えるつもりはないんだから」
そう言って、ぱちりと片目を閉じる。ジェンセンならでれでれと鼻の下が伸びるところなのだろうが、ライナスは動じた様子もなかった。
「あら、つまらない」
「危害を加えるつもりはない、とはどういうことだ?」
「言葉の通り。別にあなたたちを殺せって言われてるわけじゃないしね。わたしも、自分の獲物を追ってここに来たんだけど――あと一歩のところで逃げられたみたい」