後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「ものすごい美人さんだと思いませんか?」
「……知るか」

 ライナスはアイラを追い立てて外に出る。身を潜めていたイヴェリンたちが、二人を見かけて寄ってきた。

「どうだったか?」
「たいした情報はありませんでした」

 いらいらした様子のイヴェリンは、矢継ぎ早に問いかける。

「一応、セシリーがこの先どこに滞在するかの予定表を見つけたのですが、どのくらい信憑性があるのかは……」

 ライナスは口ごもった。

「というと?」
「中でユージェニーと行きあいまして」

 不愉快そうに、イヴェリンは眉間に皺を寄せた。

「あの家の住民の暗殺命令を受けていたそうなのですが、逃げ出した後だという話でした」

 部屋を荒らして行ったのが、ユージェニーなのかどうかまではわからない、とライナスは続けた。

「あの女……」

 珍しく怒りを露わにしたイヴェリンだったが、ライナスの持っていた紙をひったくってさっさと宿の方へと向き直る。
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