後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「わたしとアイラは戻る。お前たちは別行動だ。一緒にいるのはおかしい組み合わせだからな」

 黙って二人の話を聞いていたフェランは、アイラの側に寄ってきた。

「何もされなかったか?」
「されなかったですよ。用がないってさっさと帰っちゃったし」
「何で女が入って行ったのに気がつかなかったんだろうなぁ」

 魔術師だからですよと言ってやろうかと思ったけれど、アイラは口を閉じた。ぶつぶつと言いながら、フェランはライナスに向かって手を振る。

「イヴェリン様、先に行ってください。俺とライナスは後から護衛しながらついて行くので」

 イヴェリンはアイラの腕をとって、半分引きずるようにして歩き始める。

「ジェンセンを呼ぶ必要はなかったのか?」
「んー、呼ぼうかと思ったんですけど。今度会ったら『ヤ』り合うって言ってたんですよねー。何かイヤな予感がして」
「それは危険だな。全く、魔術師というのは度し難いものだ。新しい魔術を見つけると、試したくて仕方ないんだろう」

 二本の指で眼鏡を押し上げ、イヴェリンはため息をついた。
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