後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 パリィを床に転がしておいて、ライナスはナイフの刃先を鎖の輪に差し込む。数度な角度を変えてナイフを捻ると、鎖はちぎれて床の上に落ちた。

「動けます?」
「……肩、貸してくれ」

 よろよろと立ち上がったパリィに肩を貸しながら、アイラは彼の傷口に塩を塗り込むであろう発言をした。

「何で捕まってたんです?」

「へまやったんだよ、そこを追求すんな。セシリー相手に深入りしすぎてな。そういや、今日何日だ?」

「十九日ですけど」
「やばい、明日セシリーを囲む会がある。今夜ここに到着してるはずなんだが」

 先に立って階段を上っていたライナスが、二歩下がって首を横に振る。

「それはもう少し早く言ってほしかったな――縛っておいた見張りが見つかったのか、あの部屋に何か仕掛けてあったのか――敵が来てるぞ。地下に戻れ!」

 とりあえず階段を駆け降り、扉を閉めて室内に転がっていた重そうなものを押しつけて開かれないようにする。やれやれ、とため息をついてライナスは剣を抜いた。
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