後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「会えなかったら別の手段を考えますよ、きっと」

 なんと言えばいいのだろう。いつの間にか、アイラは父のことを信頼するようになっていた。助けに来てくれたから、というわけでもないのだけれど。

 ユージェニーに会えなければ、きっと父は別の手段をとることだろう。そう確信している。

「どちらにしても、しばらく連絡を待つしかないわね」
「いや、それはしなくても大丈夫ですよ――うわあ!」
「……あんた、わざとやってるんじゃないだろうね?」

 空中から現れたジェンセンは、ベリンダの膝の上に転がり落ちていた。ベリンダは思いきりジェンセンを床の上に落とす。ついでに足の裏で踏みつけた。

「――て、転移、ま、魔法が下手なだけだ!」

 背中をぐりぐりとされながら、ジェンセンは抗議の声を上げる。

「会話にならないから、とりあえず足は下ろしましょうか? ベリンダ?」

 エリーシャは食後のコーヒーを飲みながら、ベリンダに言う。皇女の命令ならばと、ベリンダは足を下ろした。
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