後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 ダーシーはそれを気にした様子もなかった。遠慮なくマドレーヌに手を伸ばし、それを口に放り込んだ。

 それはともかくとして、エリーシャの方もアイラたちが戻ってきてからのことを話す。ユージェニーのことは意図的に口にしなかったようだった。

 とりあえずセシリーはジェンセン・ヨークに匹敵するほどの魔術師であり、宮廷魔術師が協力してセシリーに対抗する必要があること。

 そのためには祖父である皇帝に宮廷魔術師を動かす許可をもらわなければならないことだけを告げた。

「なるほど。それではわたしは皇帝陛下にお話させていただきましょう――このくらいしかお役に立てそうにはありませんしね」

 ダーシーはカップを持った手を上げてお茶のお代わりを要求する。心得顔でファナはお茶を注いだ。

「そうしてもらえるのなら助かるわ。おじい様をどうやって動かそうか考えていたところなの」

 ダーシーの言葉に、エリーシャは素直に礼の言葉を述べる。
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