後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「それでは、わたしはこれで」

 お茶の時間を過ごしたダーシーは、自分の宿泊場所へと戻っていく。

「こういう時のために彼と婚約したのよね!」

 率直な意見をエリーシャは口にした。レヴァレンド侯爵家の現当主であるから政治的なことでは彼と彼の家の力が大きく物を言う。皇帝をどうやって動かすのかは、ダーシーの腕にかかっている。

「ダーシー様に、それが可能だと思います?」

 アイラにはダーシーの手腕というのはよくわからないので、それを一番よく知るであろうエリーシャにたずねた。

「さあ。おじい様を動かすのはなかなか難儀なことよ。証拠もないことだしね――」

 セシリーの手の者がタラゴナ帝国内で暗躍しているというのは、エリーシャのつかんだ情報でしかない。エリーシャ自身が別荘で襲われたという事実はあれ、犯人は今のところ不明だ――皇后が手引きしたのだろうということもエリーシャの憶測だ。
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