後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「操り人形の作り方」
「肉料理百選」

 同時に表紙を読んだエリーシャとベリンダは顔を見合わせた。

「レシピ本に見せかけるのはやめてほしいな」

 ベリンダは首を振る。

「レシピ本?」

 アイラは首を傾げた。アイラの目には、エリーシャと同じように「操り人形の作り方」としか見えていなかったから、ベリンダが言っていることがわからない。

「ああ、あんたの親父さんは魔術書が下級魔術師の目に触れた時は、レシピ本にしか見えないようにしているのさ」
「……わたし、普通に読んでたけど」
「あんたは例外なんだろうね、どういう処置をしているのかわたしにはわからないけど」

 それがジェンセンの恐ろしいところなのだとベリンダは肩をすくめた。ベリンダ自身魔術師としては優秀な方なのだけれど、それでもジェンセンとは著しい腕の差がある。
 
 そのジェンセンと同程度の腕を持つセシリーを相手にするとなれば、覚悟を決める必要がある。

「やれやれ、この本、どうやって使ったらいいのかわからないわね」
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